改めてバローロ、バローロボーイズの歴史を知る

つくば市フレスタプラス@あらの珈琲 焙煎人荒野です。前回「今改めてバローロが注目される理由」をお伝えしましたが今日はその続きで

■改めてバローロの歴史を知る


最初は甘口ワインの産地だったといわれフルーティーな微発泡性のものであったらしいです。それが醸造技術の進歩などのおかげで、19世紀中頃にバローロは甘口ワインから長期熟成向き辛口赤ワインへと生まれ変わったのです。「バローロ人気」が高まるのはその後。ついに宮廷でも供されるようになり、「王のワイン」の地位を築いていきます。しかし、昔も今も、時代の変化に合わせてワインの嗜好も変化。高い名声を築いたバローロですが、20世紀後半になると世界的な市場では、よりフルーティーでソフトなタンニンの早くから楽しめるワインが主流となり、飲み頃になるまで10年以上もかかる堅固なバローロが流行遅れになっていきます。


※バローロボーイズ(と呼ばれた生産者)はドキュメンタリー映画化されています。
そこで登場したのが、
“バローロ・ボーイズ”と呼ばれるモダン派の生産者たちです。
ワイン商マルク・デ・グラツィア氏が、コンサルタントとして、パオロ・スカヴィーノやロベルト・ヴォエルツィオ、エリオ・アルターレ、ドメニコ・クレリコ、ルチアーノ・サンドローネといった生産者たちを束ねそれまで長期熟成が前提だったバローロを、早くから楽しめる味わいへと変えるため、グリーン・ハーヴェスト(注1)の実施やバリック(小樽)の使用、またロータリー・ファーメンター(注2)を使った短期マセラシオン(醸し)など、ブルゴーニュから取り入れた醸造法を含む、様々な手法を導入していきました。(注1)収量を減少させる目的のために、果房を未熟な状態で収穫すること(注2)回転式の発酵槽のことで、果実の風味と色素をより抽出できる

~マルクデグラツィア氏~
ブルゴーニュに学んだ近代的バローロ生産者
「バローロボーイズ」を世界中にに知らしめた立役者。


彼らは“バローロ・ボーイズ”と呼ばれ、そのモダンなバローロは、アメリカを中心にロバート・パーカー氏や各評論家から高い評価を獲得し、一大ムーブメントとなります。


■伝統派VSモダン派論争勃発
早飲みスタイルでオークのニュアンスと果実味が強い味わいのバローロを生み出す「モダン派」。旧来から実施している大樽熟成や長期間のマセラシオンにこだわり、長期熟成が前提のタンニンが強く堅固なバローロを生み出す人々は「伝統派」この論争は世界のワイン評論家やジャーナリストを中心に注目を集め、その結果、バローロの知名度が更に高まることになります。


※バローロボーイズの一人「ルチアーノ・サンドローネ」

“バローロ・ボーイズ”による改革は、伝統派とモダン派という言葉をもって醸造スタイルや味わいを定義し、伝統派VSモダン派の対立図式のように捉えられがちです。しかし、モダン派側にはそれまでも高品質なワインを生産していた伝統派と対立する思惑はありませんでした。むしろ、地域を想う自家栽培ワイナリーの面々が、当時バローロの評価低下の一因となっていた大手ネゴシアン寡占状態をなんとか打開することや、本来のネッビオーロのポテンシャルを最大限に引き出せるようにすることが改革の目的だったからです。また、自家元詰のワイナリーが増加したことにより、同じ時期に新たな別の変化も起こり始めました。それが、「クリュ」の概念の浸透です。単一の畑のポテンシャルを伝えようとし始めた事が大きなうねりとなりました。よってイタリアでいち早く単一畑文化がこの土地に根付き始めたのです。



○まとめ
こんな歴史を経てバローロは新たな時代に突入しています。栽培技術や醸造技術が世界的に共有化されていく時代背景の中で、バローロの生産者も伝統派とモダン派の切り口だけで語ることが難しくなってきています。例えば、バリック熟成(225Lの小樽)のイメージが強いモダン派が伝統的な大樽とバリックを併用したり。逆に伝統派と言われるカヴァロットでは、モダン派のイメージが強いロータリー・ファーメンターを使用するなど、両者の境はあいまいになってきています。現在は、伝統派VSモダン派論争も収束し、伝統派とモダン派の技術をミックスした折衷型で造る生産者が多くなってきています。今回バローロの歴史を改めて学んでみて現在のバローロには、「モダン」「クラシック」とかでなく造り手ごとの異なる個性を理解し、自分にとって本当に美味しいワインを探せる、フランスのブルゴーニュワインにも似た愉しみを与えてくれるワインだと感じます。



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