今日のテーマは「キャンティ」「キャンティクラッシコ」です。

つくば市フレスタプラス@あらの珈琲 焙煎人荒野です。今日のテーマは「キャンティ」「キャンティクラッシコ」です。



キャンティ・クラシコは、中部イタリアのトスカーナ州を代表するDOCGワインです。 サンジョヴェーゼ主体で造られイタリアの顔とも言うべき存在で、イタリアワインをリードしてきました。 ちなみに「キャンティ」と「キャンティ・クラシコ」が別物なワインであります。 もともとは「キャンティ」という名の一つのワインでしたが「ある出来事」がキッカケで、キャンティ・クラシコは1996年にキャンティから独立を果たし、別々のDOCGワインとして認定されました。

※赤のエリアが「キャンティクラッシコ」です。




双方の味わい・スタイルは異なり、キャンティはチャーミングでデイリーワインなのに対し、キャンティ・クラシコは香り高く、酸がしっかりとあり、非常に優美で品質の高さが感じられるワインと一般的には言われています。
金額からしてもキャンティで1本1000円前後、安ければ500円程度で購入できるものもあります。キャンティ・クラシコは一部の特価商品などを除いて、2000円台から高いものだと数万円する高級ワインまで様々。



「クラシコ」が付いている、付いてないだけで結構紛らわしいですが、名前の表記以外にもう一つ見分けるポイントは、キャンティ・クラシコのボトルには、「ガッロ・ネーロ」と呼ばれる黒い雄鶏のマークが付いています。 これはキャンティ・クラシコのシンボルで、このマークが付いていればキャンティ・クラシコ協会にちゃんと認められている証拠になります。↑のマークが付いてれば「クラッシコ」ですね。



この2つのワインが分かれた「ある出来事」
とはいったい何だったのか?


「キャンティ」と「キャンティ・クラシコ」の分岐点とは?



まず、キャンティ・クラシコを語る上で忘れてはならないのは、キャンティの存在です。キャンティの歴史は大変古く、14世紀にまで遡ります。プラートの町で始まったブドウ栽培は、その後フィレンツェの貴族や、リカゾーリ家によって広められました。1716年にトスカーナ大公コモジ3世が、キャンティ産地の境界線を定めました。これは世界初の原産地保護の例とされています。 ちなみに、この原産地呼称として指定されたキャンティのエリアは、後の「キャンティ・クラシコ」の生産エリアとほぼ一致しています。1870年前後、それまで硬く飲みづらかったサンジョヴェーゼを、ベッティーノ・リカゾーリ男爵が「フォルムラ」(※レシピ)と呼ばれるサンジョヴェーゼをより軽く、より早く飲めるようなブドウの黄金比率を考案しました。 その混醸比率が「サンジョヴェーゼ70%、カナイオーロ20%、マルヴァジア(白ブドウ)10%」でした。 このリカゾーリ男爵が作ったフォルムラは、今日のキャンティの基礎を築いたと言われています。飲みやすくなったキャンティは、普段から気軽に飲める「安酒」としてイタリアの一般家庭のみならず、国際的に普及していきました。



世界的に大人気となったキャンティは、「キャンティ」という名がつけば売れる時代へと突入していきます。 今までキャンティを生産していなかった地域でもキャンティと名乗り販売する様になり、あれよあれよと言う間にキャンティの生産地域が拡大していったのです。 しかし、金儲けに走った一部の生産者は粗悪なものを販売し、人気と反比例するように、キャンティの質は悪化していきます。このパターンいかにもイタリアらしいでしょ。でもこれが「キャンティ」と「キャンティ・クラシコ」を分裂させるキッカケとなったわけです。



どんどん低下していくキャンティの品質に危機感を抱いたのが、昔からキャンティを造っていた生産者たちでした。1924年、33の生産者たちが自分たちのワインを守るべく、品質保護協会(キャンティ・クラシコ協会)を設立したのです。 この頃からキャンティ・クラシコのシンボル「ガッロ・ネーロ(黒い雄鶏)」のマークを使うようになったらしいです。キャンティ・クラシコ協会を立ち上げてからの彼らの躍進は目覚ましいものでした。

1967年、キャンティのワインがDOCに認定されると、歴史的な地域に限って「クラシコ」表記が可能に。1984年、キャンティがDOCGに昇格。この頃から補助品種として国際品種も10%までブレンド可能に。1996年、遂にキャンティ・クラシコがキャンティから独立し、単独でDOCGを名乗れるように。



■キャンティクラッシコのスタイルを一変させる決定
大きな決定とはキャンティ・クラシコが単独でDOCGに昇格したと同時にサンジョヴェーゼ100%の使用が認められたことでした。そして続けざまに、国際品種のブレンド比率が15%、2000年には20%と引き上げられました。この決定は、「軽くてフレッシュなキャンティ」というリカゾーリの混醸比率からの脱却であり、「重厚で優美なキャンティ・クラシコ」という独自ブランドを確立させる大きな一歩になりました。そしてついに2006年、リカゾーリが認めていた白ブドウのブレンドがキャンティ・クラシコでは完全に禁止されます。 これがキャンティとキャンティ・クラシコが全く別のワインになったキッカケだったのです。



結成当時はキャンティ・クラシコの生産者数は33でしたが、2008年には600以上にまで増加しました。こういったキャンティ・クラシコ協会の改革により、安ワインとして有名だった「キャンティ」は、「キャンティ・クラシコ」として世界の高級ワインと肩を並べるまでになったのです。




ではキャンティは「悪しき伝統」だったのか・・・?

次回はこの観点からお伝えします。



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