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コスタリカコーヒー事情 マイクロミルとは?

  • 珈琲豆
  • 2026年08月10日

小さな精製所が、コスタリカコーヒーを変えた。
 

今月おすすめしている、

「コスタリカ ドン・マヨ ラ・ロマ レッドハニー」

このコーヒーを語るうえで、どうしても外せないものがあります。

それが、

「マイクロミル」

です。

コーヒー好きの方なら、一度くらい聞いたことがあるかもしれません。

でも、

「小さな農園のこと?」

「小型の焙煎機?」

「コーヒーミルだから豆を挽く場所?」

そう思われる方も多いはずです。



今回は、コスタリカコーヒーを大きく変えた「マイクロミル」についてお話しします。

マイクロミルって何?

マイクロミルとは、農園や生産者の家族が所有する、小規模なコーヒー精製所のこと。

ここでいう「ミル」は、コーヒー豆を挽く道具ではありません。

収穫したコーヒーチェリーの果肉を取り除き、発酵や乾燥を行い、輸出できる生豆に仕上げるための施設です。

現在では、自分たちの農園で収穫したチェリーだけでなく、近隣農家のコーヒーを受け入れ、それぞれの農園や区画ごとに分けて精製するマイクロミルもあります。

つまり、マイクロミルの「マイクロ」とは、ただ設備が小さいという意味ではありません。

農園、区画、品種、収穫日、精製方法ごとに、
小さな単位でコーヒーを管理できること。

それこそが、マイクロミルの大きな価値なのです。




以前のコスタリカでは、誰が精製していたのか?

かつて多くの小規模農家は、収穫したコーヒーチェリーを大型の精製所や農協へ持ち込んでいました。

農家にとっては、自分で高価な設備を持つ必要がなく、収穫したチェリーを運び込めば買い取ってもらえる、とても合理的な仕組みです。

しかし、そこには一つの弱点がありました。

たくさんの農家から集められたチェリーが一緒に精製されるため、

●「どの農園で育ったのか」

●「どの区画のコーヒーなのか」

●「誰が、どのように育てたのか」

という個性が見えにくくなってしまうのです。

どれだけ丁寧に完熟チェリーだけを収穫しても、他の農家のチェリーと混ざってしまえば、その努力を自分のコーヒーの価値として伝えることが難しい。

農家は品質よりも、収穫したチェリーの量やその時の相場に左右されやすい立場にありました。

 



マイクロミルが生まれたキッカケ

大きな転機となったのが、1980年代末から2000年代初頭にかけて起きた、世界的なコーヒー価格の低迷です。

特に2001年前後には国際価格が歴史的な安値となり、コーヒーを作り続けても十分な利益を得られない農家が増えていきました。

「このままチェリーを売るだけでは、農園を守っていけない。」

そこで一部の生産者が考えたのが、自分たちで精製まで行うことでした。

2000年、タラス地区の「ラ・カンデリージャ」が、コスタリカ初の独立系マイクロミルを開設したといわれています。

自分で精製すれば、完熟したチェリーだけを選び、農園や区画、品種ごとに分けられる。

乾燥方法も自分たちで決められます。

そして完成したコーヒーを、農園の名前が見える状態で海外のバイヤーやロースターへ届けられる。

それまで大型精製所に委ねていた、

「味づくり」

「品質管理」

「販売先」

「価格」

を、生産者が自分たちの手に取り戻したのです。

これが、後に「コスタリカ・マイクロミル革命」と呼ばれるようになります。



マイクロミルが“ハニープロセス”を進化させた

マイクロミルの広がりによって、生産者はさまざまな精製方法に挑戦できるようになりました。

その代表が、現在のコスタリカを象徴する「ハニープロセス」です。

コーヒーチェリーの果肉を取り除いたあと、種の周りにある甘い粘液質、ミューシレージを残して乾燥させる方法です。

残す量や乾燥のさせ方によって、

・ホワイトハニー
・イエローハニー
・レッドハニー
・ブラックハニー

などに分けられます。

ミューシレージを多く残すほど管理は難しくなりますが、成功すれば果実感や甘さ、質感に個性を与えることができます。

大型精製所で大量のコーヒーを一度に処理していた時代には難しかった、細かな味づくり。

それを可能にしたのが、少量単位で管理できるマイクロミルでした。

今では「コスタリカといえばハニープロセス」といわれるほど、世界のスペシャルティコーヒー市場で確かな地位を築いています。



~~現在のコスタリカコーヒーの立ち位置~~

コスタリカは、ブラジルやベトナムのような大量生産国ではありません。

世界全体で見れば、生産量は決して多くない小さな生産国です。

しかも現在は、気候変動、収穫期の不安定な雨、働き手不足、生産コストの上昇、農地の減少など、さまざまな課題を抱えています。

生産量だけで勝負すれば、大国にはかないません。

だからこそコスタリカは、

「どれだけたくさん作るか」

ではなく、

「どれだけ品質と個性を高められるか」

という道を選んできました。

農園名や生産者名が分かるトレーサビリティ。

標高や区画、品種による味わいの違い。

そしてハニー、ナチュラル、発酵など、多彩な精製技術。

コスタリカは現在、量ではなく、品質・透明性・精製技術で存在感を示す産地として、世界のスペシャルティコーヒー市場で高く評価されています。

その中心にあるのが、マイクロミルなのです。




今月のコーヒーも、マイクロミルから届きました。

今月おすすめしている、

「コスタリカ ドン・マヨ ラ・ロマ レッドハニー」

※通販サイトはコチラです。

を手掛けたドン・マヨも、タラス地区を代表する家族経営のマイクロミルです。

完熟したチェリーを選び、果肉を取り除いたあともミューシレージをしっかり残し、細心の注意を払いながら乾燥させる。

それによって生まれるのが、熟した果実を思わせる香り、しっとりとした質感、そして後味に感じるレーズンのような甘さです。

もし、このコーヒーが昔のように、たくさんの農園のチェリーと一緒に精製されていたら。

「ドン・マヨ」

「ラ・ロマ農園」

「レッドハニー」

という個性を、ここまではっきり味わうことはできなかったかもしれません。

一杯のコーヒーの向こう側には、農園だけでなく、その味を作り上げるマイクロミルがあります。

そんな背景を知ってから飲むと、今月のコスタリカが、いつもとは少し違って感じられるはずです。

ぜひ、ドン・マヨが自分たちの手で作り上げた「ラ・ロマ レッドハニー」をお楽しみください。